制限納税義務者の取扱い
税額控除
未成年者控除
居住無制限納税義務者および非居住無制限納税義務者が適用対象
障害者控除
居住無制限納税義務者のみ適用対象
外国税額控除
制限納税義務者は適用なし
納税義務者の区分
相続人の相続開始時の住所 | 相続人の国籍 | 国内財産 | 国外財産 | 区分 | 控除の適用の可 | |
国内 | 国籍:日本・国外を問わず | 〇 | 〇 | 居住無制限納税義務者 | 未 障 外 |
|
国外 | 国籍:日本 | 10年以内に被相続人または相続人のいずれかが日本に居住したことがある | 〇 | 〇 | 非居住無制限納税義務者 | 未 外 |
10年以内に被相続人および相続人のいずれも日本に居住したことがない | 〇 | × | 制限納税義務者 | |||
国籍:国外 | 10年以内に被相続人の住所が日本にある | 〇 | 〇 | 非居住無制限納税義務者 | 未 外 |
|
10年以内に被相続人の住所が日本にない | 〇 | × | 制限納税義務者 |
納税地の取扱い
相続人の住所が国内 | 相続人の住所が国外 | |
被相続人の住所が国内 | 被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署長 | |
被相続人の住所が国外 | 各相続人の住所地を所轄する税務署長 | 自分で定めた納税地の所轄税務署長または国税庁長官が納税地を指定 |
制限納税義務者の課税価格
制限納税義務者の課税対象
制限納税義務者は国内財産についてのみ課税対処となります。
財産の所在
動産
その動産の所在地
不動産または不動産の上に存する権利
その不動産の所在地
預金貯金
預け入れた営業所・事業所の所在地
生命保険契約・損害保険契約に係る保険金
契約締結した保険会社の本店または主たる事務所の所在地
(日本に本店または主たる営業所がない場合で、日本に事務を行う営業所、事務所を有する時は、その営業所)
退職手当金
支払った者の住所・本店・主たる事務所
株式・社債等
発行会社の本店所在地
債務
制限納税義務者は債務控除の対象となる債務は次に掲げるもののうち、実際に負担した部分に限られます。
➀その者が取得した国内財産に係る租税公課
➁その者が取得した国内財産を目的とする抵当権等で担保される債務
➂その者が取得した国内財産の取得・維持・管理のために生じた債務
※葬式費用は実際に負担していても控除できません。
相続税の納税義務者と課税の範囲
相続税の納税義務者と課税財産の範囲は次のとおりです。
居住無制限納税義務者
相続等により財産を取得した相続人等で、財産を取得した時に日本国内に住所を有している人
非居住無制限納税義務者
相続等により財産を取得した相続人等で、財産を取得した時に日本国内に住所がない次に掲げる人
日本国籍がある相続人等
財産を取得した相続人等または被相続人が、その相続開始前10年以内のいずれかのときに日本国内に住所を有していた場合
日本国籍がない相続人等
被相続人が、その相続開始前10年以内のいずれかのときに日本国内に住所を有していた場合
制限納税義務者
相続等で日本国内にある財産を取得した相続人等で、財産を取得した時に日本国内に住所がない人(非居住無制限納税義務者を除く)
特定納税義務者
相続等で財産を取得しなかった者で、相続時精算課税の適用を受ける財産を取得していた人
区分 | 課税対象 |
居住無制限納税義務者 | すべての財産(国内財産と国外財産) |
非居住無制限納税義務者 | すべての財産(国内財産と国外財産) |
制限納税義務者 | 国内財産のみ |
特定納税義務者 | 相続時精算課税の適用を受ける財産 |
納税義務者区分のポイント
国外財産について課税されないのは原則として次の2つのケースとなります。
➀相続人も被相続人も「いずれも国外に10超居住」しているケース
直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税
子や孫の結婚・出産・育児を後押しするため、これらに要する資金の一括贈与に係る非課税措置が創設され、平成27年4月1日以後平成31年3月31日までの拠出の贈与について適用できます。
贈与時の手続き等
受贈者の要件
20歳以上50歳未満の子・孫(結婚・子育て資金管理契約の締結日時点)
贈与者の要件
受贈者の直系尊属(父母・祖父母)
贈与財産の種類
結婚・子育て資金の支払いに充てるための金銭など
贈与の方法
信託会社、信託銀行、銀行等および金融商品取引業者等に信託等
非課税限度額
信託受益権の価額または拠出された金銭等の額のうち受贈者1人につき1,000万円
(結婚に際して支出する費用については300万円)
申告要件
非課税申告書を金融機関経由で受贈者の納税地の所轄税務署長に提出します。
適用期限
贈与税の非課税の対象となる使い方
結婚関係費用(上限300万円まで)
入籍1年前からの挙式(準備)費用、披露宴、二次会費用・新居への引越し費用、一定期間内の新居の家賃、敷金等
妊娠・出産費用
出産費用・不妊治療費・産後ケア
子ども保育料等
6歳未満の子の医療費・保育料・ベビーシッター代
払出時の手続き
受贈者
払い出した金銭等につき、結婚・子育て資金の支払いに充当したことを証する書類を金融機関に提出します。
金融機関等
・結婚・子育て資金の支払いに充当されたことを確認し、金額を記録
・書類および記録を資金管理契約の終了の日の翌年3月15日以後6年間保存
終了時の取扱い
終了事由
・受贈者が50歳に達した場合
・受贈者が死亡した場合
・信託財産等の価額がゼロとなった場合に終了の合意があったとき
金融機関の調書提出
非課税拠出額および資金管理契約の期間中に結婚・子育て資金として払い出した金額の合計金額等を記載した調書を受贈者の納税地の所轄税務署長に提出します。
残額の贈与税課税
終了時に、受贈者に非課税拠出額から資金支出額を控除した残額に対して贈与税の課税
ただし、受贈者が死亡した場合には、贈与税は課されません。
契約期間中途において贈与者が死亡した場合の取扱い
契約期間中途において贈与者が死亡した場合、その死亡の日における非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額については、受贈者が贈与者から相続または遺贈により取得したものとみなして、贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算します。
ただし、その残額に対応する相続税額については相続税額の2割加算の対象とされません。
贈与者が契約期間中で、受贈者が贈与された資金を使い切らないうちに死亡してしまったとき、次のとおりであることに注意します。
教育資金の一括贈与
相続財産に加算しません。
結婚・子育て資金の一括贈与
相続財産に加算します。
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税
この特例は受贈者ごとに非課税限度額があり、贈与者は複数の者へ贈与することができます。
適用要件
贈与者
父母や祖父母(直系尊属)
受贈者
贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(子・孫)で贈与の年の1月1日において20歳以上の居住者等
住宅の要件
家屋の床面積が50㎡以上240㎡以下であること。
床面積の1/2以上が専ら居住の用に供されるものであること。
概要
贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その住宅取得等資金を自己の居住用の一定の家屋の新築・取得・増改築等にあてて、同日までに居住開始した場合、下表の非課税限度額まで贈与税が非課税となります。
区分 | 消費税率10%適用者 | 左記以外の者 | ||
---|---|---|---|---|
住宅所得の契約等の締結時期 | 省エネ等住宅 | 一般住宅 | 省エネ等住宅 | 一般住宅 |
2016年1月~2020年3月 | 3,000万円 | 2,500万円 | 1,200万円 | 700万円 |
2020年4月~2021年3月 | 1,500万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 500万円 |
2021年4月~2021年12月 | 1,200万円 | 700万円 | 800万円 | 300万円 |
留意点
➀相続時精算課税の適用を受けている者であっても相続開始の際に相続財産に合計しません。
相続開始前3年以内の贈与の場合の生前贈与加算の対象になりません。
➁適用対象となる受贈者の贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下の者に限定されます。
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税
適用を受けようとする場合
本特例の適用を受けようとする場合には、「教育資金非課税申告書」を取扱金融機関の営業所等を経由して、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出することにより、非課税限度額までの金額は贈与税の課税価格に算入されません。
贈与税の申告書の提出は必要ありません。
年齢要件
本制度の贈与者については受贈者の直系尊属であればよく、年齢要件はありません。
学校等に支払われる教育資金とは
学校等に支払われる教育資金とは、学校等に直接支払われる入学金、授業料などのほか、教育充実費、遠足費、PTA会費、学級会費、生徒会費、学校の寮費、学用品の購入費など学校に直接支払われるものが含まれるが、下宿代については本制度の教育資金には該当しません。 学習塾など、学校等以外の者に支払われる金銭も5,000千円を上限に本制度の適用を受けることができるが、学校等に支払われる入学金、授業料などと合わせて15,000千円が上限となります。
すでに本特例を受けている場合
受贈者がすでに「教育資金非課税申告書」を提出して本特例を受けている場合でも、非課税限度額(受贈者一人につき1,500万円)に達するまでは、複数の直系尊属から追加で贈与を受けることができます。
この場合、「追加教育資金非課税申告書」を取扱金融機関の営業所等を経由して、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
信託の受益権を取得した場合
個人が、その直系尊属と信託会社との間の教育資金管理契約に基づき信託の受益権を取得した場合等には、当該信託受益権等の価額のうち15,000千円までの金額に相当する部分の価額については、贈与額の課税価格に算入しません。 本制度の非課税の限度額は、受贈者ごとに15,000千円です。
金銭を預貯金として預け入れる場合
教育資金管理契約に基づき、金銭を預貯金として預け入れる場合には、書面による贈与によらなければなりません。
教育資金管理契約の終了
本特例の適用を受けて贈与により取得した財産は、贈与者が死亡した場合でも、教育資金管理契約が終了していなければ相続税の課税対象とはなりません。
なお、教育資金管理契約は以下の➀~➂の事由により終了し、➀または➂の事由により終了した場合には、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額が、贈与税の課税対象となります。
また、その残額に対して贈与税が課税された後3年以内に贈与者が死亡したときには、相続開始前3年以内の贈与財産の加算の適用があります。
➀受贈者が30歳に達したこと
➁受贈者が死亡したこと
➂教育資金管理契約に係る信託財産の価額がゼロとなった場合等において受贈者と取扱金融機関との間でこれらの教育資金管理契約を終了させる合意があったことによりその教育資金管理契約が終了したこと
受贈者が30歳に達したこと
教育資金管理契約は、受贈者が30歳に達した場合には終了し、当該教育資金管理契約に係る非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額があるときは、当該残額については、当該教育資金管理契約に係る受贈者の30歳に達した日の属する年の贈与税の課税価格に算入します。 なお、受贈者が教育資金を使い終えるまでに贈与者が死亡したとしても、その時点での課税はありません。
受贈者が死亡したこと
受贈者が死亡したことにより教育資金管理契約が終了した場合には、当該教育資金管理契約に係る非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額については、贈与税の課税価格に算入しません。 受贈者である被相続人の相続財産になります。
信託財産の価額等がゼロとなった場合
教育資金管理契約に係る信託財産の価額等がゼロとなった場合において、受贈者と取扱金融機関との間で教育資金管理契約を終了させる合意があった場合には、その合意に基づき終了する日において教育資金管理契約は終了します。
贈与税の配偶者控除
贈与税の配偶者控除とは
贈与税の配偶者控除は、婚姻期間が20年以上の配偶者から贈与により居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を取得し、その贈与を受けた年の翌年3月15日までにその不動産の居住の用に供し、かつ、その後引き続き居住の用に供する見込みのある場合に、贈与税の課税価格から最高で20,000千円(贈与を受けた居住用不動産の価額を限度とします)を控除できる制度です。
婚姻期間が20年以上であるかどうかは、婚姻の届出があった日から贈与税の配偶者控除の対象となる贈与があった日までの期間により計算します。
さらに、配偶者控除後の金額から基礎控除(1,100千円)を控除することができます。
店舗兼住宅の持分の贈与を受けた場合
店舗兼住宅の持分の贈与を受けた場合には、居住用部分から優先的に贈与を受けたものとして申告することができ、居住用部分がおおむね90%以上の場合は、そのすべてを居住用不動産として扱うことができます。
家屋の増築
なお、家屋の増築は、居住用不動産の取得に含まれるため、増築に充てた金額は贈与税の配偶者控除の適用を受けることができます。
また、配偶者は直系尊属ではないため、一般贈与財産の税率を適用します。
適用されない場合
贈与税の配偶者控除は、その年の前年以前のいずれかの年において、贈与により当該配偶者から取得した財産に係る贈与税につき、贈与税の配偶者控除の適用を受けた場合には、その者には適用されません。
従って、贈与税の配偶者控除の適用を受けた年の翌年以降、さらに残りの自宅の持分の贈与を受ける場合には、贈与税の配偶者控除の適用を受けることができません。
特定贈与財産
妻が夫の相続税の期限内申告書等に、財務省令で定める事項を記載し、一定の書類を添付して提出することにより、贈与税の配偶者控除の規定により控除されることとなる金額に相当する部分は特定贈与財産として生前贈与加算の対象とならなくなります。
ただし、その財産は、贈与税の課税対象となるため、相続税の申告とは別に贈与税の申告をしなければ、贈与税の配偶者控除の適用を受けることはできません。
居住用不動産の要件
贈与税の配偶者控除の適用対象となる居住用不動産は、贈与を受けた配偶者が居住するための国内の家屋またはその家屋の敷地(借地権を含む)であることが要件です。
なお、居住用家屋とその敷地は一括して贈与を受ける必要はなく、居住用家屋のみまたは居住用家屋の敷地のみの贈与であっても、贈与税の配偶者控除の適用を受けることができます。
ただし、居住用家屋の敷地のみの贈与を受ける場合には、その家屋の所有者が次の2つの要件のいずれかに該当する者であることを要します。
➀贈与を受けた配偶者の配偶者
➁贈与を受けた配偶者と同居する親族
土地または家屋
贈与を受けた配偶者が取得した土地等または家屋について、店舗兼住宅のように、その専ら居住の用に供している部分と居住の用以外の用に供されている部分がある場合には、その居住の用に供している部分の土地等および家屋については、贈与税の配偶者控除の適用を受けることができます。
なお、居住用部分が建物の90%以上である場合は、建物全体を居住用として適用を受けることができます。
生前贈与加算の対象とならない部分
相続開始の年に贈与税の配偶者控除の対象となる居住用不動産の贈与を受けた場合に、その居住用不動産について贈与税の配偶者控除の規定により控除されることとなる金額に相当する部分は、特定贈与財産として生前贈与加算の対象とはなりません。
この生前贈与加算の対象とならない部分は贈与税の課税価格に算入され、贈与税の申告を行うことで贈与税の配偶者控除の適用を受けることができます。